物件購入

今後増えていくホームインスペクション

平成28年6月3日公布された宅建業法の改正ではホームインスペクションの活用を促し、中古住宅の流通を活発化させる目的があるとされます。そもそも「ホームインスペクションとはなんぞや」という事を含め、今回の改正のポイントについて見てみましょう。

ホームインスペクションとは

住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行う専門業務の事です。

診断の方法は、目視で、屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状態を診断するのが基本であり、瑕疵の有無を判定したり、瑕疵がない事、または建築基関係法令等への適合性を証明するものではありません。

目視を基本とするというのがネックでして、例えば壁を剥がしたり、床をめくったりするような破壊的方法を用いたり、設計図書を照合して専門家ががっちりと調査するという事ではないという事は理解しておいてください。建物状況調査(インスペクション)が行われたから構造的あるいは法的に安全だという事では必ずしもありません。

媒介書面に建物状況調査事業者の「あっせん」に関する事項を追加

宅建業者は媒介契約をする際に売主(買主)さんに対して建物状況調査制度について説明をし、希望があればあっせん可能な事業者の会社情報を説明する事になります。調査というのが前述のインスペクションと言う事です。

建物状況調査は義務ではありません。業者もただでやってくれるわけではありませんので、やるかどうかは依頼者の判断となるのです。ただし、先般の民法改正(平成29年6月交付、交付後3年内に施工)によって中古物件の取引に際して瑕疵担保責任ではなく「契約不適合責任」が問われる事になるのを考えると、今現在はともかくとして、今後はやっておいた方が無難といいいますか、調査をするのが一般的になっていくのかもしれません。契約不適合責任については後述します。

重要事項説明書に建物状況調査実施状況等に関する事項を追加

重要事項説明に建物状況調査実施状況等に関する事項が追加されます。過去一年以内に実施された調査が対象です。

  1. 建物状況調査を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合はその結果の概要
  2. 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定める物の保存の状況(新築時や増改築時の確認済証や検査済証等の保存の有無、建物状況調査結果報告書・既存住宅性能評価書・定期調査報告書・新耐震基準等に適合する事を証する書類の有無)

建物の状況の確認事項を記載した書面の交付義務

売買契約時に建物の現況(基礎、外壁等)を売主、買主が相互に確認し、その内容を宅宅建業者が売主・買主に書面で交付します。具体的には

  1. 専門的な第三者による調査結果を重要事項として説明した場合は、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について双方が確認した事項として、確認事項を記載した資料の名称・建物状況調査の結果概要・資料作成者・資料作成年月日を記載します。
  2. 上記以外の場合は原則として該当事項「無」と記載する
  3. 建物状況調査等の結果以外で客観的に劣化事象等を確認し、かつ、その結果を取引価格等に反映した場合など、既存住宅の状況が実体的に明らかに確認されるものであり、かつ、それが法的にも契約の内容を構成されている場合はその事項を記載する

建物状況調査の意義

建物状況調査は国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が行います。建築士さんがさらに講習を受けて行うので、まさに専門家と言うのに相応しいものですね。目視が基準とは言え、外見上からわかる建物の現状を確認した上で契約するかどうかを判断でき、また、購入後どのようなメンテナンスを行えばよいかの参考となります。

さらに、住宅瑕疵担責任保険法人の登録を受けた検査事業者の検査人が建物状況調査を実施し、建物状況調査の結果、劣化・不具合が無いなどの一定の条件を満たす場合には、既存住宅売買瑕疵保険に加入する事ができます。ちなみに、この保険に加入するための検査有効期限は1年となります。

契約不適合責任について

平成29年6月交付の改正民法では瑕疵担保責任が廃止となりこれに変わり売主は「契約不適合責任」を負うと規定されました。現行法では特定物売買の場合には瑕疵担保責任、不特定物売買の場合には債務不履行責任が適用されるとされてきましたが、改正民法では特定物・不特定物の区別なく契約の内容に適合しない場合には売主に責任が生じる事となります。以下でポイントを整理します。

瑕疵担保責任 契約不適合責任
法的性質 法定責任 債務不履行責任
対象 隠れた瑕疵 契約内容に適合しないもの
損害賠償請求

売主の無過失責任
(買主の善意無過失)

信頼利益に限る

売主の帰責事由必要

履行利益も含む

契約解除 契約の目的を達成できない場合

催告によりできる
(不履行が軽微である場合は不可)

追完請求 不可 履行可能であれば、可
買主の責めに帰すべき場合、不可
代金減殺請求 不可 催告により、可
買主の責めに帰すべき場合、不可
権利行使の保全方法 知ってから1年以内に
損害賠償等の請求が必要
知ってから1年以内に
契約不適合の事実の通知で足りる

上記表をご覧いただけば改正の前後でかなりの変更点がある事がご確認いただけます。中でも損害賠償請求の要件や請求範囲が変更し、新たに追完請求や代金減殺請求ができるようになった事が特徴的ですね。

中古物件取引の今後

中古物件を取引する場合にプロの目で予め劣化状況などを調査しておくことは買主にとって良い判断材料となる事は間違いないでしょう。ただ、その費用をどちらが負担すべきなのかが難しいところですね。義務ではありませんので、売主・買主どちらがやるのかは当事者次第だからです。この制度が普及すれば、既存の建物を売買するなら建物状況調査をするのが一般的となり、その費用を考慮して売買価格が決定されていくことに恐らくなるのでしょう。現在の新築一戸建ては長期優良住宅制度に見られように、3世代100年に渡って住み続けることができる住宅づくりを目指しています。もちろん100%ではありませんし、いずれ100%となるわけではないのでしょう。けれども、各種優遇制度(あるいは優遇に近い制度)のおかげもあって、段々と増えているように思われるのが私の実感です。

せっかく100年もつ住宅だとしても、メンテナンスをせずに放置すれば、経年劣化によって当初の性能は著しく失われてしまいます。雨漏りなどしてしまえば、構造耐力にも悪影響を与えてしまうのです。定期的に手入れをすることが安心して住み続けることに繋がるのですよね。

欧米では何世代にもわたって住宅が受け継がれることが富の蓄積に繋がっていると言われます。おじいちゃん、ひいおじいちゃんが建てた家に住み続けるのと、各世代ごとに家を新築するのとではえらい違いますよね。住宅ローンが35年とかかかるのを考えてみてください。言わば、一生をかけてマイホームを持つのです。そりゃ大変な事ですよ。その大変さがないならば、住宅資金をもっと別なことに使う事ができるはずです。豪華な旅行ができたり、楽しみにお金をかけたり、きっと今とは違うライフスタイルになるはずなのです。今回の宅建業法及び民法の改正はそうした社会を目指す一歩になるといいですね。

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