住いのメンテナンス

仁義なき湿気との戦い

一戸建てに限らず建築物にとっての大敵は水です。雨や湿気によって建物にどのような影響が出るのかご存知方も多いでしょう。建材である木材は朽ち、強固な強度を誇った鉄はサビてボロボロになり、壁は崩れてしまいます。水は外部どころか内部でも建物を浸食します。湿気によってカビをはじめとする雑菌が増えれば、人体にも影響を与えるでしょう。寒くなれば結露によって窓下が濡れ、壁内部では建物の強度を下げるような悪さをするかもしれません。仁義なき湿気との戦いは今日も地上のどこかで繰り広げられているのです。

日本の家屋と湿気

日本の家屋は従来「在来工法」という伝統的な建て方で造られてきました。在来工法は「木造軸組み工法」とも呼ばれ、その変幻自在とも言える木材の特性を活かした柔軟な空間造りが、間取り変更を可能にしてきました。家族の成長や変化とともに、住いもその姿を少しずつ変化させ、それぞれの家族の歴史を共に歩んでいくのです。

在来工法の特徴は何と言っても柱のような垂直材と梁や大引きのような水平材(横架材ともいう)との組み合わせで家の骨組みを構成し、そこに肉付けをしていく事です。柱と柱の間に斜めに材を渡せば、筋交いとして耐力壁を作り上げます。今でこそ2×4住宅やパネル工法、ダイライト工法などの様々な工法を選べるようになりましたが、長らく私たちの暮らしを支えてきたのはこの在来工法なのです。※参照「一戸建ての工法についての基礎知識

かつての日本の家屋は隙間が多く、自然と換気が出来る構造となっていました。そして、土壁や漆喰などの調湿効果のある素材を用いる事で高温多湿な風土にあった住いを形成していたのです。建築技術の向上が建物の気密性を高めたころから、湿気に悩まされるようになったのだと言えます。加えて、かつて家の至る所に見られた調湿性に優れた素材が用いられないようになった事で、湿気への悩みはより深刻になったのです。

室内に湿気が増えると何が起こる?

室内に湿気が増えると何が起こるでしょうか。少し考えてみれば思いあたるでしょう。すなわちカビと結露です。それぞれ異なる季節に発生するものですが、快適な生活を営む上で歓迎すべき存在ではありませんね。

カビ

カビは菌類です。普段目に見えない胞子が空中を漂っていて、何らかの理由で繁殖してしまうと、目に見えるようになるのです。お皿に乗せていた料理に「気づいたらカビが生えていた」というのは、実は空中を漂っていたカビの胞子が料理に付着し、その後繁殖した、という事に他なりません。カビの繁殖のメカニズムを知れば、カビの繁殖を抑える事ができそうです。以下をご確認ください。

適度な温度

カビが発生しやすいのは20~30℃とされます。とりわけ25℃前後で活発に発生すると言われます。梅雨の平均気温は20℃強。まさに、カビが発生しやすい環境にあるというわけです。但し30℃以上になると発生は衰え始め36℃以上では発生が殆ど止まるようです。

適度な湿度

カビには水分が必要で、湿度60%以上で繁殖しますが、80%ではより一層活発に繁殖します。

養分

カビが繁殖するには、栄養が必要で、ホコリ、汚れも栄養源となります。光合成を行わないカビは、有機物質を必要とします。

酸素

カビが発育するためには酸素を必要とします。

結露

結露は冬場によく見られる現象です。空中には水分が含まれているのですが、温度によってその量が変化します。暖房器具を使って室内を暖めると空気はより多くの水分を含んだ状態となります。ところが窓ガラスに触れると急激に冷やされて多量の水分を含んでいられなくなってしまいます。そのため水滴が窓ガラスに付着し、気づけば水が溜まってしまっていたということになるのです。夏場キンキンに冷えたジョッキグラスに水滴が付くのもまさにそれと同じです。空気がジョッキに触れる事で空気が冷やされ、水分を含んでいられなくなってしまい水滴となって現れるのです。住宅では窓ガラスの他、コンクリートや鉄などに触れても同じような事が起きます。

頻繁に水滴が生じれば、建材が傷んでしまう事は想像に難くありませんね。壁内部で生じる内部結露などでは、目の届かないところで劣化が進んでしまう事でしょう。

室内の湿気はどうやってコントロールする?

ではどうすれば室内の湿気を調整できるのでしょうか。費用をかけずともできる事があるので、まずはそれから始めてみましょう。

湿気を出さない

お風呂の水をためっぱなしにしていませんか?あるいは室内に片付け忘れたコップなどが放置してありませんか?水が貯まっていて、それが蒸発すれば湿度が高くなってしまうのは当然です。意味もなく水を貯めておかないようにしましょう。浴室などはカビが発生しやすい場所です。入浴を終え、いらなくなったお湯は流してしまいましょう。追い炊きするのならば、蓋をしてできるだけ蒸発しないようにしておきます。そして、使用後の浴室内には水しぶきが飛び散っています。水滴はこまめに拭き取る習慣を付けましょう。

エアコン以外の暖房器具を使うと知らないうちに湿度が高くなっている事があります。結露に悩むご家庭のうち、暖房器具を多用している事が原因である事もよくある話なのです。場合によっては使用する暖房器具を選定し直した方がよい場合もあります。

換気

室内の通気はとても重要です。この事をご存じない方が案外多いことにいつも驚かされます。日に何度か換気をするだけで随分室内環境は改善されます。面倒くさがらず、室内換気を行いましょう。換気を行う場合は、各部屋同時に行います。通気とは読んで字のごとく、空気が通る事です。ある部屋の窓一つ開けただけでは通気しません。それぞれの部屋の窓を複数個所あけ、できれば他の部屋もどんどん窓を開けていきます。そして台所でもどこでもいいので一箇所換気扇を回します。窓、扉を開けた状態にしておけば、一箇所換気扇を回せば空気の流れができます。あちこち回すと却って効果が薄れてしまいます。

換気はカビに対しても結露に対しても有効です。カビはよどんだ空気の中で繁殖します。繁殖の条件が整ったとしても、毎日新鮮な外気を室内に取り入れていれば、繁殖を防止できます。家具の後ろ側や押入の中は人為的に空気をかき混ぜてあげないといけませんが、それでもちょっとした努力で出来る事です。※参照「カビ対策

冬場は寒いですが、乾いた空気を室内に入れる事で、湿気の多い室内の空気を外に排出する事ができます。結露防止に効果的です。

湿気を吸収する素材の活用

かつての日本家屋では調湿機能のある素材を至る所で用いていました。前述した土壁や漆喰だけでなく、畳や建具として用いられる襖や障子にもわずかながら調湿機能が備わっていました。ところが、人々の好みが洋室へと向う過程で、調湿機能のある素材はほとんど使われなくなってしまったのです。

そんな中珪藻土や漆喰と言った素材に目を向ける人達があらわれました。現代風にアレンジした装飾で、見た目にも満足、室内環境も改善できるという事で、現代の人達の選択肢の一つとなったのです。

珪藻土(けいそうど)

藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積物で調湿性能や脱臭性能が非常に優れています。日本古来の塗り壁材として用いられてきました。

漆喰(しっくい)

調湿機能はやや珪藻土に劣るものの、カビが発生しずらいという特徴を持ちます。珪藻土同様日本古来の塗り壁材です。

エコカラット

湿気が多い時には吸着し、乾燥すれば吐き出す、これが調湿機能です。エコカラットは調湿性能に優れたタイルで、LIXILの商品です。ペットやタバコの臭いを脱臭、空中に漂う有害物質を吸着するという機能も備えます。水周りなどの装飾として用いれば、お洒落で快適な空間が作れます。

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