不動産市場

双方代理と媒介似ているようで違います

民法では双方代理を禁止しています。双方代理と言うのは契約などの法律行為について当事者双方の代理をする事です。双方代理で契約を行った場合は無権代理となり、基本的には効果は本人に帰属しません。ただし、本人が追認した場合には契約の時に遡って(さかのぼって)有効となります。では不動産売買契約において売主及び買主双方の媒介をする場合にそれは双方代理にならないのでしょうか?

代理とは何か

代理とは代理人の法律行為の効果を直接本人に帰属させる事を言います。不動産売買契約において売主様が高齢かつ入院中であるためその息子さんが代理人として契約するような事があります。その場合にはご本人様が息子さんに売買契約を締結する権限を与える旨記載した委任状を持参いただくこととなります。

契約は通常本人同士が行うものです。そこに身内とは言え他人が介在する事がとても重大なのです。本人以外が行った契約が本人に帰属し、不動産と言う財産が処分されるのですからいかに代理人の権限が大きなものなのかがわかります。言い方は悪いですが委任状と言う紙切れ一枚に本人の意思がつまっているわけですから、委任状が本物なのかどうかしっかりと確認しなければなりません。実務では本人が実印で押印し、3ヶ月以内の印鑑証明書の添付を持って本物として取り扱います。

媒介とは何か

媒介とは我々不動産業者にとって最も基本的な業務活動の一つとなります。不動産取引において当事者の間に入って契約等円滑にとり行われるように調整する事です。代理との違いは媒介業者には決定権が無い事です。つまり、法律行為を当事者に直接帰属させる事ができません。

買主様、売主様それぞれに「ああした方がいい、こうした方がいい」とアドバイスはできますが、交渉の途中で一方からの要望を聞いて「はいわかりました」と結論を出す事はできません。「売主様はこうおっしゃってるのでどうしましょうか?」とあくまでも当事者に事実を伝えその決断を仰ぐ事しかできないわけです。双方の主張に耳を傾け、適宜助言する事でスムーズに取引が成立し、決済するように間をとりもつのです。

双方代理は何故禁止されるのか

そもそも何故双方代理が禁止されるのでしょうか。それは民法上「利益相反行為」にあたるとされるからです。
不動産売買で説明すると売主は一円でも高く売りたい。買主は一円でも安く買いたい。売主と買主の要望は相反するわけです。もし双方代理が可能だとすると、代理人の損得勘定、気分次第でどちらか一方に有利となるよう取り計らう事が可能となります。そうなると他方は不当に損害を被ってしまいますし、そうならないよう双方代理が禁止されているのです。

自己契約

自己契約とは契約者の代理人が自分と取引するような事例です。
例えば海外赴任が決まったAさんが出国前に自動車販売業者Bに車の販売を依頼したとします。数年は日本に戻れないという事で販売に関する一切をBに任せ代理人にしました。まだ1年ほどしか乗っていない車を手放すのは惜しいのですが、150万くらいでは売れるかなぁと思っていました。それから約1ヶ月Bより売却できたとの報告があり、Aさんの口座に50万円の振込みがなさました。さすがに安すぎやしないかと思って、休日Bに連絡すると、実はBで買い取ったとの事でした。

Bが当初から買取を前提に話をしていたのなら問題はありませんでした。契約の当事者がAさんとBだからです。Bの提示金額に納得の上売却したのでしょうし、双方に正当な合意がありました。ところが、販売の代理を任されたBが買い取った場合、これは自分が自分と契約したのに他なりません。Aさんの意思確認が不要なところ、自分の思い通りに値段を決めて、Aさんになりかわって物事を決めてしまっているからです。

話がちょっと違いますがこれはまさに「ダメな代打俺状態」のです。プロ野球の兼任監督が代打として自分を送り出す時に「代打俺」と告げる事から一時注目を集めた事がありました。あれは、選手としてピークを過ぎ、尚且つ誠実な人柄で信頼を受ける人だからこそ可能な事です。公平に判断して自分が適任として告げているであろう事がわかるから問題になりません。

これがもし試合出場機会のほとんどない利己的な選手が兼任監督をやったとして、大事な場面で「代打俺」と告げたらどうなるでしょうか。結果は凡打でゲッツー、そして試合終了なんて事になりかねませんし、いかにも自分の利益だけを考えて「代打俺」してるとわかるでしょうから問題となりますよね。

人様の意思表示をその人に成り代わって出来る状態の人が自分と取引できたら大変です。それは明らかに利益が相反する状況ですし、上記事例では自分に有利な金額で取引を終了してしまっています。そうならないよう、双方代理同様自己契約も禁止しているのです。

双方の媒介は禁止されないのか?

上記理屈で言うと買主様、売主様の間に立つのが一社である場合問題はないのでしょうか。不動産取引では「片手」「両手」という概念があります。「片手」とは契約当事者双方にそれぞれ仲介業者がついていて、売主側の仲介業者は売主の利益を代表して買主側の仲介業者と交渉を行い、契約の成立、決済へとまい進し、最終的には売主様より仲介手数料をいただきます。買主側の仲介業者は同じく買主様より仲介手数料をいただきます。この場合には買主、買主側仲介業者、売主、売主側仲介業者という4者が存在する事となります。

これに対して「両手」の場合には仲介業者は1社しか登場せず、売主様、買主様双方を仲介します。窓口が一つで、売主様、買主様双方の主張、要求を聞きながらある場合には相手の意見を取り入れ、ある場合には上手に拒絶し、取引を円滑に進めるよう努力をします。でも一見すると利益の相反する人の間に立つ事になるわけで、もし一方に肩入れしたら問題はないのでしょうか。

双方の調整こそ不動産業者の腕の見せ所

実はこのように利益相反する当事者、売買では「売主と買主」、賃貸では「貸主と借主」双方の仲介をする事はよくある事なのです。逆に言うとこのように利益相反する当事者双方の利益を考えつつ調整を行う事こそが不動産業者の腕の見せ所と言いますか、求められる資質なのです。話が壊れないよう言葉を選びながら時に相手を説得し、時に心から共感してそれを相手に受け入れてもらう。どっちか一方のみが得をするような仲介ではとても契約はまとまりません。お互いが納得できる地点を探し、そこに導くのこそ不動産屋の本文なのです。結論としては双方の仲介を行う事は法律的にも実務的にもまったく問題ありません。

問題は両手にこだわる姿勢

当事者双方から報酬を受取るために情報の出し惜しみをするような風潮があるにはあります。売主さんより売却依頼を受けて販売活動を行う業者を「物元」と呼びますが、物元は自分で買主さんを見つければ「両手」になります。事実弊社でも売却物件をお預かりして、両手手数料を頂戴する事があります。ただ、弊社では仲介手数料を割引してますので、200%(売主さんから100%、買主さんから100%)いただく事は実際にはありませんが。

収益性を考えると両手にしたいのはわからない話ではありません。私だって一回の取引で100%以上の手数料がもらえればうれしいです。しかし、それにこだわると売主様の利益を損なうことになりかねない事を申し上げておきます。より早く、より高く売るためにはより多くの人に情報を知ってもらい実際に見てもらう事が必要です。機会が増えればそれだけ良い買い手と出会える可能性が増えるからです。

両手にこだわるあまり情報を露出させなければ機会が減少し売主さんが不利益を被るのは明らかです。自分のところで情報をストップする事を「囲い込み」と呼び、大手有名不動産会社でもこうした手法をとっているとされます。(レインズに登録されたばかりの物件について案内を申し込むと「もうお話が入ってますから」と案内もさせてくれない某大手もあります。一度と言わずに二度三度・・もう問い合わせする気もなくなりましたね)

双方を仲介するのは実はとても骨の折れる難しい役割です。一方の側に立って相手方と交渉する方が誰が見ても、どこから見ても公平性が高いのがわかるはずです。ですから取引の大部分は片手であってしかるべきと私は考えます。両手を否定しませんが、取引全体の中で片手が大部分を占めるようになればきっと不動産業界はさらにクライアント目線の健全な業界になるでしょう。

 

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